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生物に学び、生物を越える

超分子化学に立脚した生命現象の理解・制御

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科学技術の進展に伴って、生命現象や生体機能の仕組みが分子レベルで解き明かされてきた。なかでも特に、生命を構成する細胞はファンデルワールス力、水素結合、静電相互作用、そして疎水性相互作用に代表される超分子化学的な弱い相互作用を巧妙に利用して、その機能を制御している。

​生体を構成しているシステムを人工的に模倣し、再構築することで、生体の機能に迫り、さらには生体の機能を凌駕する人工システムの開発も可能である。そのようなシステムの開発は生命現象の理解だけでなく、医療をはじめとした様々な分野への貢献が期待できる。

我々の研究グループでは『超分子化学に立脚した生命現象の理解・制御』を目指し、新規分子システムの開発に取り組んでいる。

超分子形成に基づく難水溶性化合物の水溶化

​医薬品など、機能性分子の多くは水溶性が低く、水中における安定性に乏しいことから、生体応用は制限されてきた。そのため、これらの難水溶性化合物の水溶化技術の開発は生体応用を指向した際に必要不可欠である。

当研究室では、環状構造を有するオリゴ糖であるシクロデキストリン、多糖、または人工細胞膜であるリポソームを天然に由来する可溶化剤として利用した難水溶性化合物の水溶化に関する検討を進めており、その医用応用やイメージング材料としての応用に取り組んでいる。

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​交換反応を利用したリポソームへの疎水性化合物の封入と医用応用

脂質二重膜構造からなるリポソームはその優れた生体適合性に併せて、その内水層に親水性薬剤、脂質二重層に疎水性薬剤を封入できることから、優れたドラッグデリバリーシステムとして、応用展開されている。

当研究室では、疎水性薬剤/シクロデキストリン錯体の崩壊を利用したゲスト分子の交換反応法によって、リポソーム膜内へと疎水性薬剤を従来法と比較して効率的に挿入できることを見出した。

本手法を利用することによって、ポルフィリンやフラーレンをはじめとした機能性薬剤を搭載したリポソームの開発に成功しており、本システムのがん治療用システムの有用性を示した。

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外部刺激に基づくリポソームの形態制御

​生命の構成単位である細胞は、その細胞の形態を巧みに制御している。例えば、神経細胞は細胞膜を構成する脂質成分として、曲率の大きな糖脂質であるガングリオシドを利用することでチューブ状の構造を形成することが知られている。また、細胞膜はクラスリンと呼ばれるタンパク質の機能によって、小胞体を形成する。このような細胞の形態変化は生命現象の制御において、重大な役割を果たしているが、そのメカニズムの多くは未だに解明されていない。

当研究室では、細胞膜モデルであるリポソームと剛直性を示すナノファイバーの間に生じる超分子化学的な相互作用を制御によって、リポソームの形態制御が可能であることを見出した。

本システムのメカニズム解明は生命現象の理解の一助となるだけでなく、リポソームを基盤としたバイオマテリアルの設計に有用である。

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リポソーム膜上でのコロイド粒子の自己組織化

リポソームを構成する脂質は分子構造に起因して膜の流動性が異なることが知られている。また、この膜構造は一般に融点以下の温度ではゲル相と呼ばれる流動性を示さない状態、融点以上の温度では液晶相と呼ばれる流動的な状態をとる。

当研究室では、この相転移現象を利用することでリポソーム膜上での金属コロイド粒子の配列制御が可能であることを世界に先駆けて見出した。

​本システムの利用に金属触媒の触媒活性の制御など、従来なしえなかった材料創製への応用 が期待できる。

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